「こどもの矯正」はいつ始めるのがベスト？ 6歳、7歳、8歳が最適な理由
お子さまの歯並びが気になり始めたとき、「いつから矯正治療を始めるべきだろう？」と疑問に思う保護者の方は多いのではないでしょうか。最近では、「予防矯正」という言葉を耳にする機会も増え、「こどもの矯正」について早期の治療に関心を持つ方が増えています。結論からお伝えすると、お子さまの矯正治療は6歳、7歳、8歳頃に始めるのが最も理想的です。
なぜこの年齢が最適なのでしょうか。この時期は、永久歯が生え始める混合歯列期にあたり、顎の成長や歯並びの土台づくりにアプローチするのに最も適しているからです。この時期に治療を開始することで、将来的な歯並びをより良い状態に導くことができ、大人になってからの本格的な矯正治療が不要になったり、治療期間が短縮されたりする可能性が高まります。
筋機能矯正装置とトレーニングの重要性
6歳から8歳という年齢でこどもの矯正を始める際に、中心となるのが筋機能矯正装置と筋機能トレーニングです。これらは単に歯を動かすだけでなく、歯並びが悪くなる根本的な原因にアプローチすることを目的としています。
【筋機能矯正装置の役割】
筋機能矯正装置は、歯や顎の骨を物理的に動かすというよりも、口周りの筋肉（舌、唇、頬など）を正しく機能させることを目的とした装置です。
● 舌の正しい位置の誘導
舌は本来、上あごの天井にある「スポット」と呼ばれる位置に収まっているのが理想的です。しかし、現代のこどもたちは、軟らかい食べ物を多く食べる傾向や口呼吸などの影響で、舌が低位にあったり、間違った動きをしたりすることが多く見られます。筋機能矯正装置は、舌を正しい位置に誘導し、上あごの成長を促します。
● 口呼吸から鼻呼吸への改善
口呼吸は歯並びを悪くする大きな原因の一つです。常に口が開いている状態では、歯列に外側から圧力がかかり、狭い歯並びになりやすくなります。装置の使用と合わせて、決められたトレーニングを行うことで、自然と口を閉じることが出来る状態、さらには口呼吸ではなく、鼻呼吸ができる状態をめざします。鼻呼吸の獲得は、歯並びに影響するだけでなく、全身の健康にも大きなメリットがあります。
● 唇や頬の筋肉のバランスを整える
唇や頬の筋肉が強すぎると、歯列が内側に押されてしまい、歯並びが狭くなります。逆に、口唇を閉じるちからが弱く、舌を前に押し出す力が強い出っ歯になったり、前歯が咬まない開咬になったりします。筋機能矯正装置は、これらの筋肉のバランスを整えることで、歯列が正しく広がるのをサポートします。
【筋機能トレーニングの役割】
装置を装着するだけでなく、同時に行う筋機能トレーニングも非常に重要です。トレーニングは、装置の効果を最大限に引き出し、正しい筋肉の動きを習慣化させることを目的としています。
● 舌のトレーニング
舌の正しい動きや位置を意識するトレーニングを行います。これにより、舌が上あごを内側から押す力が加わり、上あごの成長を助けます。
● 口唇のトレーニング
唇を閉じる力を養うトレーニングです。口唇閉鎖力がつくことで、口呼吸が改善され、正しい咬み合わせにもつながります。
● 正しい嚥下（飲み込み）のトレーニング
飲み込み方も歯並びに影響します。舌を正しく使って唾液や食べ物を飲み込むトレーニングを行うことで、舌の機能が向上し、自然と歯並びを整える力が働きます。
筋機能矯正装置とトレーニングは、車に例えるなら、装置が「車体」でトレーニングが「燃料」です。両方が揃って初めて、歯並びの土台をしっかりと築くことができるのです。この時期に「こどもの矯正」を始めることで、ただ歯並びを整えるだけでなく、顔全体のバランスや呼吸、発音にも良い影響を与えることができるのです。
＜症例紹介＞
主訴：出っ歯
年齢性別：7歳女性
症状（診断）：上顎前突、開咬、叢生
治療方針：上顎前歯の舌側移動、舌癖の改善、歯列の拡大
治療装置：プレオルソtypeⅠ
治療期間：8ヵ月（+経過観察）
治療費用：275,000円+調整料5,500円/月
副作用：痛み、歯根吸収、歯肉退縮
【早期に「こどもの矯正」を開始する5つのメリット】
筋機能矯正装置とトレーニングを組み合わせた早期のこどもの矯正には、多くのメリットがあります。
①顎の成長を最大限に活かせる
顎の骨が成長している時期にアプローチすることで、顎の幅を広げたり、前後的なズレを改善したりすることができます。これにより、永久歯が綺麗に並ぶためのスペースを確保しやすくなります。
②将来の抜歯の可能性を減らせる
顎のスペースが確保できることで、永久歯を抜かずに矯正治療ができる可能性が高まります。こどものうちに土台を作っておくことで、身体に負担の少ない矯正治療を目指せます。
③大人の矯正治療が不要になる、または期間が短縮される
早期に土台を整えておけば、大人になってから本格的なワイヤー矯正などが必要なくなるケースも珍しくありません。たとえ本格的な矯正が必要になっても、治療期間が大幅に短くなることが期待できます。
④正しい顔の成長を促す
歯並びや咬み合わせだけでなく、正しい鼻呼吸や舌の位置が習慣化することで、顔の筋肉がバランス良く発達し、顔全体のバランスが整います。
⑤コンプレックスの解消
歯並びが気になるこどもは、笑顔に自信が持てなかったり、人前で話すのをためらったりすることがあります。早期に治療を始めることで、精神的なストレスを軽減し、前向きな気持ちで過ごせるようになります。
早期治療後の流れ：第二期治療について
筋機能矯正装置とトレーニングによる早期治療は、歯並びの土台づくりを目的とする「第一期治療」に分類されます。この第一期治療を終えても、すべてのこどもの歯並びが完璧に整うわけではありません。永久歯への生え変わりや顎の成長には個人差があり、最終的な歯並びは成長が落ち着いてから決まるからです。
もし、第一期治療だけでは満足のいく歯並びにならなかった場合は、「第二期治療」へと移行することがあります。この第二期治療では、主に以下の装置を用いて、より精密な歯の移動を行います。
● ブラケット矯正: 前歯など、特定の歯並びだけを整えたい場合に、部分的にブラケットを装着して治療を行います。全体を動かす必要がないため、治療期間も比較的短く済みます。
● マウスピース型矯正装置: 透明なマウスピース型の矯正装置です。見た目がほとんど目立たず、取り外しが可能なので、食事や歯磨きを普段通りに行うことができます。子どもの矯正に特化したプログラム「インビザラインファースト」は、第一期治療でも用いることがあります。
どちらの装置を使用するかは、お子さまの歯並びの状態やご希望に応じて、歯科医師と相談して決定します。
第一期治療を始める前に知っておくべきこと
こどもの矯正を始める際は、保護者の方の理解と協力が不可欠です。装置の装着時間やトレーニングの習慣化は、お子さま一人ではなかなか難しいからです。毎日一緒に取り組み、お子さまを励ましてあげることで、治療はよりスムーズに進みます。
また、こどもの歯並びは、成長とともに常に変化します。そのため、定期的な歯科医院への通院が非常に重要です。
まとめ
お子さまの矯正治療を成功させる鍵は、適切な時期に、根本原因にアプローチすることです。6歳から8歳という、顎の成長期を最大限に活かせる時期に筋機能矯正装置とトレーニングを用いたこども 矯正を始めることで、将来の健康な歯並びと笑顔の土台を築くことができます。
もちろん、歯並びの状況はこども一人ひとり異なります。もしお子さまの歯並びについて少しでも気になることがあれば、ぜひ一度、当院にご相談ください。専門的な視点から、お子さまに最適な治療プランをご提案させていただきます。
「こども 矯正」は、単に見た目を良くするだけでなく、お子さまの健やかな成長をサポートする重要なステップなのです。